2008年03月23日

高校野球の真髄

下関商2−3×履正社  甲子園
春のセンバツが始まった。


取り合えず明徳の勝利を見た後、再びテレビを見ると、
履正社と下関商業戦、序盤に2点を挙げられ無得点のまま
最終回の下関の攻撃、既に1アウト走者無く打順は四番、
ここからドラマは始まった。

いきなり左翼ポール付近へ飛び込むホームラン。
此処まではヒット8本を重ねながら無得点だっただけに、
1矢を報いたかと思っただけだったが、続くエースで五番打者の
連続ホームランが飛び出せばアッサリと試合は振り出しに戻った。

1イニング2ホームランは大会対記録だそうで、
最終回、言わば土壇場のシーンでこれを見れたのは幸だった。

実は昨日から西日本大会の県大会が始まっており、残念ながら
葉山チームに敗退して、今日の予定が空いてしまい、
勝っておれば、その時間は東部球場に居た訳で、
この素晴らしいプレーや、その後に続く感激するシーンを
見る事が出来なかったことになる。

野球はドラマだと言われる。
数多くのプレイを経験し、数多くのプレイを見て来た。
その一つのプレイがその後の選手達にどの様な結果を生んできた
かも、数多く胸に刻まれている。
しかし、今日のプレイほど心に残るシーンは再び見る事は
出来ないだろう。

最終回、劇的な大会対記録となる2ホームランで2−2となり
延長戦になった試合。
10回裏履正社の攻撃、2アウト走者二塁打席には刈谷選手。
一打サヨナラの場面での彼の打球が全てだった。

思い切り振り抜いた打球は大きく弧を描きセンター後方へ、
背走する下関背番号8番。
此方を振り向き捕球体勢に入り、誰もが11回の攻撃に期待した瞬間
彼のグラブから白球が零れ落ちた。
急いで白球を拾い返球したが.....

2アウトの為二塁走者は同時にホームベースを駆け抜けていた。
歓喜してベンチから飛び出す履正社の選手達、呆然とする
下関のエース、センターで泣き崩れる背番号8。

そこに打者走者の刈谷選手の顔が画面いっぱいに映し出された。

恐らくこの僅かな瞬間に彼の表情は何度と無く変化した筈である。
大きなセンターフライは一瞬サヨナラの期待を生み、背番号8の
背走する姿が振り返った時は、センターフライに終わった
打席を悔やんだ筈、そして落球を見た時は、勝利の確信に思わず
笑み、どころか歓喜した筈である。

しかし、画面の顔は違っていた。

ヘルメットの下にある大きな瞳は何処か遠くを見つめ、
唇は力なく微かに開かれていた。
そこには喜びや怒りの表情ではなく、不安げな気持ちが現れていた。

私は彼の表情の中に、センターで蹲っている背番号8を見つめ
彼のこれからの人生を想像する、心優しい刈谷選手の気持ちを
感じ取った。

野球をする者にとって、サヨナラになるタイムリーエラーが
意味する物とはどんなものか良く解っている。


リーグ2期目の香川OG−高知FDのチャンピオン決定戦
FDの梶田選手があのプレイをどれ程気にした事か、
あれを思い出せばタイムリエラーをしてしまった選手の悩みは
如何程のものかお解かりだろう。

まして、高校球児の失策は、これまでも多くのドラマに為る程
その選手達の一生に大きな陰を落とし続けている。


残念ながら、この落球は下関商の背番号8選手のこれからの人生、
余程の事が無い限り、心の傷となり、その責めを負うことになる。

それが解っているから自分達の勝利より、落球した選手を気遣う
刈谷選手の表情であったろう。

私はこの刈谷選手の表情に、勝敗に拘りながらも相手を思いやる
スポーツマン本来の姿を見た気がした。


野球はドラマであり、人生の縮図である。
それは、一つのプレイに現れる事も有り、長い人生の多くの
試合を通じてやっと現れるものも有る。
真剣に勝利に向ってプレイすれば自ずと結果は現れるが、
勝敗とは別に生じる結果こそが、スポーツ全般、中でも野球の
面白みである。


甲子園初勝利、校歌を聞く履正社ナインの中に純粋に勝利を
喜ぶ刈谷選手の顔があったのも、高校球児らしく清々しかった。

背番号8番にはこれからの苦難を乗り越えていって欲しいものだ。



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posted by T−Rex at 15:34| Comment(0) | 観戦記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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